【仕事】産業材ルートセールス~外回り編 ver.1~

今日は産業材ルートセールスの記録。なお、以降に記録する「産業材」とは主に「製造業の産業材」と定義します。

「産業材のルートセールス」と聞いて何を思い浮かべるだろうか。この世界に限らないが、少なくとも産業材のルートセールスについては「やってみなければわからない」仕事のうちの一つである。

なにせ一般消費者には全く馴染みの無い製品を取り扱うのだ。筆者は産業材の中でも主にFA機器に近い業種なのだが、このキーワードを聞いた事がそもそもあるだろうか。

「ベアリング」「タイミングベルト」「油圧ホース」「減速機」「チェーン伝導」「継ぎ手」「軸受け」「伸銅」「ステンレス鋼」「エンジニアリングプラスチック」「鍛造品」・・・あげればキリが無いが少なくともこれらのキーワードは筆者は就職するまで聞いたことも無かった。

そもそも、商社のイメージは例えば三菱商事のような超巨大な企業のイメージ程度しかなく(学生時代に企業研究等をマトモにしなかったので大変底辺レベルであった)、FA機器って何よ?である。

しかしこれらの商材は世の中を実は裏で支えている大事な存在で、我々の生活とはきってもきれない重要な存在である。しかしだ、これも断言できる。

地味。

ビックリするぐらいに地味な業界である。

一般のTV等のメディアで広告を打たれることもなく(最近でこそ、超大手の数社がCMしたりするケースはあるが・・・)雑誌等に掲載されることもない。せいぜい、日経新聞程度だ。そんな超地味な世界だから余計に仕事は何やってんの?と、見えないことだらけだ。

あくまで筆者の経験則だが記録する。なお、このブログを読んで頂いた方は別のブログに記載している「産業材」に関する記事を並行してお読みいただければ有難い。

1. メーカーの仕事:概要

ルートセールス、と聞いて何を思い浮かべるだろうか。「何かよくわからないけど、お客さんまわりでしょ。」

正解。

もうそのまま正解である。産業材の歴史は古い。

「古い」と言っても江戸時代や明治などではなく、昭和あたりからだ。多くの企業は戦後に勃興しており、日本の製造業を支えてきた歴史がある。当然、有名企業(中小企業も含む)の中には100年企業もあり、とても古い業界なのだ。

古いと何が言えるか。そう、取引している歴史も長い事が一般的なのである。本ブログでは詳細を省略するが、産業材と言うのはメーカーは直接モノを販売しない。だいたいが商社を介して販売する。

そして大抵、その商社は「固定」されており、すなわちメーカーのルートセールスとは「決まった取引先(の、うち殆どが商社)」をぐるぐると回って営業する事が主体となるのだ。

「え?じゃあ楽でしょ。」と思った貴方は甘い。(笑) いや、人によってはラクなのかもしれないが。 

筆者が「楽ではない」と思うのはその仕事をするキャラクターに依存する。

とりわけ、陰キャには極めてキツい仕事なのだ。

オタク全開で人とのコミュニケーションが嫌いなまま、バイトはしていた経験はあるがロクな経験も積んでいなかった陰キャの筆者がこの世界に就職して思った仕事の印象は「これは辛い。」であった。※筆者はメーカーです。

なにせ取引先の商社も古い会社が多い。相応の役職に就いている人たちはすべからく年配の人達ばかりであり、文字通り「昭和な人」であることが大半なのだ。

そう言った人たちに「営業をかける」わけである。想像していただきたい。入社をして担当を振られた後、営業してこい、と言われたら一体何をすればよいのだろうか。

製品の知識はある。過去の資料もある。

では、誰にアポイントを取って何を話しする?まずそこから始まる。

因みに筆者は若かりし頃、何をしていいのか、全くさっぱりわからなかった。何なんだ、ルートセールスって、と言うレベルである。

しかも商社に行っても(会社によるが)重役の人以外は大抵はアポイントなんて取らない。フラっと行ってみて、そこにいる商社の営業マンに声をかけていくのが仕事の基本である。

これが最初は事の他辛い。

オープンな事務所でみんな下を見ながら仕事していたり、電話していたりする。誰もこっちを見てニッコリなんてしてくれない(当然と言えば当然なのだが)。会社によっては「何しに来たの?」と言わんばかりの雰囲気を醸し出す会社すらある。最初はひたすら知っている人(この場合、引継ぎを受けた人、と言った方が正確)だけに声をかけ、慣れてくると他の人にも声をかけていくのだ。

次に困るのが「で、何を話すれば良いんだっけ?」と、これである。熟練の方にとっては「嘘でしょ、そんな事で悩むのか?」と思われるかもしれないが「たいしたミッションが無い」状態だと、これを探すのが本当に大変なのだ。

上司から「○○の製品を売り込んでこい!」だの「◇◇のクレームに対応してこい!」と具体的な”指示”がある方がよっぽど楽である。

”何もない”のが一番辛いのだ(ただし、これは経験を重ねてくると”一番良い”に好転する)。

とりあえず、何気なく行って→挨拶して→何か話して→終わり、このスーパー生産性の無い営業活動を実施し続けるのである。この「生産性の無い」と言うのがポイントで、これを続けていると本当に楽しくなくなってしまう。しかもメーカー営業はノルマこそあるものの、保険の販売や不動産の販売と違って「自分が頑張ったからといって完全に連動して売り上げがあがるわけでもない」ため、努力の証が見えづらい。代わりにいうなれば「放っておいても売り上げはあがる」事が往々にして起こりうる。

この構造を理解して「ルートセールスとして何をすべきか」を見つけるまでに本当に時間がかかる(かかった)。逆にこの「ルートセールスとして何をすべきか」がわかると仕事が楽しくなり、やりがいを得られるようになる。

因みに筆者はこれがわかるまでに約確か1年半から2年ほどかかった。1年では答えを見つけられなかったように思う。当然ながら人によってはすぐに見つけられる人もいるし、中にはずっとわからずに「つまらない仕事だな」と感じ続ける人もいる。

元来「陰キャなのに営業職」と言う時点で結構詰んでるのだがここでどう頑張るかが本人にとっての分岐点であることは間違いない。この点については後々のブログ記事で明らかにしていくとしよう。

2. 商社の仕事 :概要

メーカーと違って「商社の産業材におけるルートセールス」とは語弊を承知で言うが「御用聞き」だと思っている。ここで誤解してほしくないのは「御用聞き」はとても難しい、と言うことだ。

考えてみれば御用聞きほど仕事として難しいものもない。お客様からのありとあらゆる要望を「はいはい」と聞き入れ結果を出し続けるのである。産業材の商社におけるルートセールスで「御用聞き」を経験したことのある人ならわかると思うが、本当に難しい

ビックリするほど「聞いたことも無い要望」を次々と出されるからだ。

例えばこんな要望が来る。「あのさあ、今○○のラインで◇◇のメーカー品を使ってたんだけど、壊れちゃったので△△の性能を満たすやつを見積もってくれない?」とこんな具合である。

これが本当に難しい。

産業材の種類と言うのは本当に何百何千何万と種類があり、その中からピンポイントでお客様のご要望を満たす何かを持ってくることは、言うなれば道具を全部把握しているドラえもんよろしく全知全能の人でもない限り不可能である。大変高度な知識を本来は要求されているわけだ。

しかし無理だ。

そんなもの毎回用意できるわけがない。想像していただきたい。例えばカップラーメンを製造している会社があるとする。

カップラーメンを製造している会社では「食品の原料を投入するライン」「原料を加工するライン」「加工品をパッケージングするライン」「それぞれを途中で検査するライン」「保管する倉庫」と滅茶苦茶な工程の多さである。

その中では様々なFA(ファクトリーオートメーション)機器が活躍しており、往々にしてそれらは何かしらの不具合を生じているのだ。壊れたり、寿命だったりと様々である。

それだけ多くの機械に対していちいち全ての要望を商社として全て受け入れることは難しく、また、同様に仕入れをしようとしている(この場合における)カップラーメンの製造会社としても同じ事なのである。いわゆる「購買担当者」「設備保全担当者」がラインの全ての機器に対して、部品の全てに至るまで熟知していてエキスパートなんてことはありえないのだ。

それゆえ、出入りしている商社に業界用語で言うところの「丸投げ」を実施するのである。

前述したが「丸投げ」されてもあまりにも品種、種類が多いため、正直なところすべてに精通することは不可能である。しかし「得意な分野」を商社は持っており、その得意の分野で勝負していくのだ。

例えばカップラーメンを製造するラインには必ず「搬送ベルト」が介在する。そこで「ベルト」の知識に特化した商社が存在するわけだ。カップラーメンの購買担当者やそのベルトについては得意な商社に毎回相談するというわけである。

もし産業材の商社にお勤め、もしくはこれから勤める、と言う方は「自社の強み」が必ずあるはずだ。このメーカー品は在庫を多く持っていて知識も豊富で対応が早い、この種類の商材は扱いが多く、多種多様なメーカーからソリューション出来る、などだ。この点は把握しておくと吉だろう(当然だが)。

また、前述の「メーカーの営業マン」は大概は「商社の営業マンの情報に頼る」事が多いため、仮にあるメーカー品にあかるくなっておけばそれだけで仕入先であるそのメーカーから良い待遇で接してもらえる。場合によっては接待を受けることもしばしばである。(大口の受注を得た場合など。)

商社のルートセールスがメーカーのルートセールスと一味違うのは取引先への足の運び方だ。

大手の商社であれば「営業」と「物流」が分離しているため、営業マンは常に営業のみ実施していればよいが、中小企業の産業材取り扱い商社は大概が「配達」を兼ねているため、必然的に取引先へ日参する事となる。

これがメーカーの営業マンとの最大の差である。また、同時にメーカーの営業マンとは違う強みにもなる。

と言うのは日参してる(ケースが大半)ため、タイムリーな情報を得やすいのだ。この点はメーカーの営業マンに対してのアドバンテージとなる。

メーカーが最も欲するのはユーザーの購買動機や情報なので商社の営業マンはそれらの情報を得やすい環境なのだ。

さて、メーカーの営業と商社の営業、どちらが面白いか。筆者としての結論はズルい言い方だが「甲乙つけがたい」と考えている。どちらも一長一短あるからだ。この点については今後のブログに記録していきたいと思う。

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